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2023.09.21

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群馬県が挑むe-Sports施策!eスポーツと地域の結びつきとは

ゲームの対戦をスポーツと捉えるe-Sportsは、地域おこしやビジネスの起爆剤として注目されています。
なかでも、注目されるのが群馬県です。
群馬県は日本初のe-Sports専門部署を立ち上げるなど、地域振興の手段としてe-Sportsを活用しています。
今回は、群馬県のe-Sportsの取り組みに焦点を当て、e-Sportsと地域やビジネスとの結びつきについて解説していきます。

1.群馬県や地方自治体も注目するe-sports市場

はじめに、e-Sports(eスポーツ)の市場規模と成長の背景について解説します。
また、e-Sportsに関連した地域の動きについても見ていきましょう。

1-1.e-Sportsの市場規模は3年で約30億円成長

e-Sportsは、ビデオゲームやコンピューターゲームの対戦をスポーツ競技として捉える際に用いられる言葉で、
エレクトロニック・スポーツの略語です。
1980年代にコンピューターゲームが誕生して以来、格闘ゲームのブームやゲームプレイヤーのプロ化が進んだことなどもあり、
ゲームのスポーツ化が進行。一般社団法人日本eスポーツ連合によると、
2000年からe-Sportsという単語が使われはじめたとのことです。

2021年の世界市場規模は1000億円を突破しました。
国内でも、e-Sports(eスポーツ)の市場規模は大きくなりつつあります。
一般社団法人日本eスポーツ連合と角川アスキー総合研究所によると、放映権やスポンサー、
アイテム課金・賞金などで占めるe-Sportsの日本の市場規模は、2021年で約78億円でした。
2018年の約48億円と比べても増加しており、2023年には130億円に迫ると予想されています。
また、試合観戦、動画視聴などから割り出したe-Sportsの国内のファン数は2021年に約743万人。
2018年の約382万人から倍近く増加しています。

e-Sportsの成長の背景は、ゲームに関する若年層の意識の変化が一つの理由として挙げられるでしょう。
ある保険会社が全国の中高生を対象に2021年6月に実施した「将来なりたい職業」調査によると、
ゲームの実況をする「ゲーム実況者」は男子中学生で5位、女子中学生で10位にランクインしたとのことです。
ゲームを遊びではなく、仕事として捉えている現状が伺えます。

1-2.e-Sportsのシンポジウムに地方自治体も参加

e-Sportsの市場規模や注目度が大きくなる中で、
地方自治体の間で地域活性化の手段の一つとしてe-Sportsを活用する動きがみられます。
2022年に神奈川工科大学で開催された「eスポーツシンポジウム2022」には
神奈川県横須賀市、小田原市、厚木市の職員も登壇し、e-Sportsを用いた地域活性化策について語りました。
そのなかで横須賀市の職員は、e-Sportsの大会で企業から協賛金を提供してもらったり、
企業版ふるさと納税での寄付もあったりと「eスポーツの可能性を感じている」と話しています。

多くの自治体がe-Sports関連の施策に力を入れる中、群馬県は注目すべき自治体だといえます。
群馬県は、日本で初めてe-Sportsに関連する部署を立ち上げるなど、
e-Sports関連施策に早くから取り組んでいる自治体の一つであるためです。

2.群馬県が進めるe-Sports関連施策

群馬県では、地域活性化のためe-Sportsの取り組みが進んでいます。
群馬県に設置された専門部署や具体的な取り組み、取り組みにおける課題について見ていきましょう。

2-1.群馬県がe-Sportsに力を入れたきっかけとは


画像出典:群馬県公式HP

群馬県は2020年4月、日本で初となるe-Sports専門部署「eスポーツ・新コンテンツ創出課」を発足させました。
2023年4月からは「eスポーツ・クリエイティブ推進課」と名称を変更し、
e-Sportsに関するさまざまな施策を実施しています。

群馬県がe-Sportsに力を入れた理由はe-Sportsの市場規模の拡大というのもありますが、
大きなものとして「自動車産業の市場環境の変化」が挙げられます。

群馬県の「地域再生計画」によると、群馬県の産業構造は、
自動車産業を中心とした製造業が大きな割合を占めているといいます。
主要な自動車メーカーの一つであるSUBARUは、群馬県太田市に設立された飛行研究所を前身とする航空機メーカーがルーツです。
そのような背景もあり、地域経済は自動車産業に頼っているという状況でした。

しかし、世界中で電気自動車(EV)の普及が進んでいます。
現在主流であるガソリン車の将来性が見通せない中、群馬県としても新しい経済基盤を育てる必要があったのです。

群馬県は東京都心からも遠くなく、交通ネットワークが整っています。
2020年には大規模施設「Gメッセ群馬」が開所したこともあり、
e-Sportsのイベントを開催できる環境が整備されていました。
若者への訴求力があるだけでなく、認知症対策や障害者の就労支援としても活用されている
e-Sportsが持つバリアフリー性の高さに注目し、街おこしの原動力としてe-Sportsを活用していくこととなったのです。

参考:
地域再生計画 – eスポーツを活用した産業・地域活性化事業
SUBARUの歴史|SUBARU採用サイト

2-2.関連イベントの開催やe-Sports人材育成が進む


画像出典:GUNMA Esports公式HP

群馬をe-Sportsの聖地にするべく、県内ではさまざまなイベントが開催されています。

2021年3月には、富岡市にある世界遺産「富岡製糸場」に設立されているホールを会場としたe-Sportsイベントを開催。
エキシビションマッチや富岡市民を中心とした4チームによるチーム対抗戦などが実施されました。

大会の誘致にも力を入れています。
19歳以下の国内最強チームを決定する「U19eスポーツ選手権」や、
ゲーム実況者の全国大会「全日本eスポーツ実況王決定戦」を開催。
全国から多くの参加者が群馬に集いました。

イベントと並行して民間・自治体を挙げて注力しているのが、e-Sportsに関連する人材の育成です。
中でも、群馬県高崎市にある育英短期大学では、e-Sportsに関するコース「eスポーツコース」を開設。
eスポーツを通じてコミュニケーション能力やプログラミング技術を身に着けてもらうことが、コース開設の狙いです。
eスポーツを体験するだけでなく、イベントの企画運営について考える授業も実施され、
競技者の指導や大会の運営を担える人材を育てています。

参考:eスポーツ推進ポータルサイト – 群馬県ホームページ(eスポーツ・クリエイティブ推進課)

2-3.ゲーム依存症対策や保護者への理解促進が課題

e-Sportsの施策を進めるうえで課題となる、ゲーム依存症対策と保護者などの広い世代への理解促進について、群馬県では対策を進めています。

ゲーム依存症の対策として、群馬県は教育へのe-Sports活用を目指す「北米教育eスポーツ連盟日本本部」と協力し、
心身の健康度合いを図るチェックシートを作成。ホームページで公開しています。
設けられているチェック項目は、ゲームをプレイする前に学校の課題などのやるべきことをやったか、体を動かしたかなどです。

また、ゲーム依存症に関するシンポジウム
「湯けむりフォーラム みんなで話そう!ゲームのこと~eスポーツからゲーム依存まで~」を開催。
精神科医やゲーム依存症治療に携わっている医師、プロゲーマーなどが参加しました。
参加者はゲーム依存症に関する議論を進め、議論の様子は動画で配信されています。

若年層では受け入れられているe-Sportsですが、幅広い年齢層に理解してもらうことも重要です。
プレイヤーは未成年であることも多いため、特にプレイヤーの保護者への理解を進めていく必要があります。
そのために、一般的になじみの深いものとe-Sportsを結びつけていくことは、理解促進において有効な手段となりえます。
前述の通り、富岡製糸場などの県ゆかりの場所でe-Sports関連イベントを開催していくことは、手段の一つとして考えられるでしょう。

今後群馬県がどのようにe-Sportsに関する理解を広げていくか、注目されます。

3.ビジネスの分野に広がる群馬県のe-Sportsの取り組み

群馬県のe-Sportsの取り組みは群馬県内のビジネスまで広がっています。
ここでは、群馬県内のe-Sportsに関する企業の動きについてご紹介します。

3-1.e-Sportsを福祉に生かす株式会社ワンライフ


画像出典:株式会社ワンライフ公式YouTubeチャンネル

e-Sportsを活用した障がい者の就労支援事業「ONEGAME」を展開しているのが、
児童発達支援や放課後デイサービス、障がい者の就労支援事業を手がける株式会社ワンライフ(群馬県前橋市)です。
サービスの利用者は、職場でe-Sportsを取り入れることで、日常生活においても良い影響が出ているようです。

ONEGAMEで用意されているコースはe-Sports選手を目指す「選手コース」、
e-Sportsイベント運営スキルを磨く「イベントコース」、ゲーム実況者を目指す「実況解説MCコース」の3種類です。
それぞれのコースのカリキュラムは、実際のe-Sports選手やe-Sportsキャスターが作成。
事業内で定期的にイベントを開催しており、地元のテレビ局が協力するなど、
さまざまな協賛企業を巻き込みながら事業を展開しています。

実況解説MCコースの利用者の中では、声を出しづらかったものの、
発生や活舌を学ぶことで大きな声で話せるようになったというケースもあったようです。

参考:ONEGAME – 株式会社ワンライフ

3-2.専門施設の運営でe-Sportsビジネスを展開する糸井ホールディングス


画像出典:GUNMA Esports公式HP

鋼材の販売や鉄筋・鉄骨工事などを展開する糸井商事が中核の糸井ホールディングス(群馬県高崎市)は、
e-Sportsの専門施設「GUNMA Esports」を作るほか、県内で開催されるe-Sportsイベントの協賛や運営を担っています。

本業とは直接関係ないものの、「群馬県の地域活性化に貢献したい」という思いから取り組みを進めています。

「GUNMA Esports」は同社の自社ビル1階に設立されました。
ステージに約160インチの大型LEDビジョンが設けられているほか、ゲーミングパソコン12台が常設されています。

同社の強みは、独立リーグ所属の野球チームを創設し、運営してきた経験を持っていることです。
野球チームは当初、赤字続きだったといいますが、10年弱かけて黒字化に成功しました。
今後は既存チームの合併・買収を念頭に置きながら、
プロゲーマー所属のe-Sportsプロチームの運営も視野に入れているといいます。
プロチームがある自治体として、群馬県=e-Sportsというイメージをより定着させることが期待できそうですね。

参考:GUNMA Esports公式ページ

3-3.群馬県など主催のGUMMA LEAGUEで異業種交流促進


画像出典:GUNMA LEAGUE公式Twitter

群馬県などで構成される「群馬県企業等対抗社会人eスポーツリーグ実行委員会」は、
県内企業を対象とした社会人のe-Sports大会GUNMA LEAGUE(群馬県企業等対抗社会人eスポーツリーグ)
を2021年から毎年開催しています。大会の特徴は、対戦前に名刺交換の時間が設けられていることです。
e-Sportsによる、県内企業の異業種交流を促進することが狙いです。

2022年開催大会には2021年と比較して10チーム増の34チームが参加しました。
実況は地方テレビ局のアナウンサー、解説はサッカー解説者の松木安太郎氏が務めるなど、本格的な大会運営が実施されています。

参考:GUNMA LEAGUE公式HP

4.群馬県以外の自治体もe-Sportsに注力


e-Sportsに力を入れている群馬県を筆頭に、群馬県以外の自治体でもe-Sportsの取り組みが広がっています。

【富山県】
2016年から始まったe-Sportsイベント「ToyamaGamersDay」は、
開催当初5万円の予算だったのが、2019年には3会場を使った大規模イベントに発展するなど大きな盛り上がりを見せています。
e-Sportsの裾野を広げようと、初心者向けに地元のショッピングモールでもイベントを開催。
地域密着型の取り組みを進めています。

【大分県別府市】
もともとの強みである「温泉」を生かしたe-Sportsイベント「別府温泉LAN」を開催。
会場には足湯が用意されているほか、ゲームがプレイし放題など、
観光資源とe-Sportsをかけ合わせた取り組みが実施されています。

群馬県や富山県のようにイベントを複数開催して聖地化を狙う一方、

別府市のように地域の特色とコラボした取り組みを実施するのも一つの地域活性化の形でしょう。
今後e-Sportsが地域活性化においてどのように生かされていくのか注目されます。

まとめ:群馬県のe-Sports(eスポーツ)による地域活性化モデルがビジネスを生み出す

ここまで群馬県のe-Sportsに関する取り組み、ビジネスへの広がりについて見ていきました。
課題を乗り越え、e-Sportsをどのように地域活性化やビジネスに結びつけていくか。
群馬県がモデルを示してくれるかもしれません。
群馬県が示すモデルは、いつか日本各地の事業活性化に貢献する可能性もあるでしょう。

e-Sportsは市場規模やファン数が広がっており、地域活性化という役割を担っていく存在になりえます。
e-Sportsの動向や群馬県をはじめとする自治体の取り組みに、引き続き注目してみてはいかがでしょうか。
大きなビジネスチャンスを生むきっかけになるかもしれません。

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