ビジネス基礎知識

2022.03.18

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世界で人気のK-POP!海外進出を成功に導くビジネスに学ぶ

高度な歌唱力とダンスパフォーマンス、優れたルックス、そしてカリスマ性……とあらゆるスター要素を持つK-POPグループ。「Korean Pop」の略で、韓国発のポップ音楽アーティストです。次々と世界進出を果たし、海外の音楽シーンにおいてもその実力を認められ、今や世界中で高い人気を誇ります。

K-POPが世界中で多くのファンを獲得できているのは、グループ結成時から海外マーケット参入を意識した戦略が練られているため。K-POPのビジネス戦略をひも解いて、世界の舞台で成功している理由を探ってみましょう。

1.世界でも注目の記録を打ち出すK-POP


K-POPの人気は、今や世界のビッグアーティストと肩を並べるほどです。音楽チャートのランキングや活動経歴を見てみると、彼らの活躍ぶりがわかるでしょう。この章ではK-POPグループの例を挙げて、世界中でいかに高い評価を得ているかを解説します。

1-1.「江南スタイル」をはじめBillbordで存在感を示すK-POP

K-POPが最初に世界的ブームとなったのは、2016年の「江南(カンナム)スタイル」。コミカルなパフォーマンスを覚えている方は多いでしょう。音楽チャートとして世界的に知名度が高いBillboardで7週連続2位となるほどの人気を集めました。

その後、アジアの人気アーティストから成る「SuperM」や、多国籍なメンバーで構成された「NCT127」を筆頭に、多くのK-POPグループがBillboardにランクイン。2020年には、クールなルックスと楽曲が魅力のガールズグループ「BLACKPINK」が1stアルバムでBillboard 200(アルバムチャート)2位となった上、影響力が高い人気アーティストの指標となるArtist 100で1位に輝きました。ガールズグループがArtist 100で首位となったのは世界初です。

1-2.勢いが止まらないBTS

2020年のArtist 100で2位となったのは、今や世界的スターとなった「BTS」。翌2021年は1位を記録。さらに、BTSは同年、音楽ストリーミングサービス・Spotifyが発表した「2021年 Spotifyグローバルランキング」において、世界で最も再生されたアーティストの3位に輝きました。

さらにアメリカのローズボウル・スタジアムやイギリスのウェンブリー・スタジアムでコンサートを開催。これらのスタジアムは、Queenやエド・シーラン、エミネムなどのビッグ・アーティストがコンサートを行った会場だというと、その人気ぶりがわかるでしょう。
1-3.(G)I-DLなどもワールドツアーで世界のファンを魅了
世界の音楽シーンで認められるようになったK-POPグループは、ワールドツアーを行うことも。キュートなルックスとポップな楽曲の「TWICE」は、過去3回のワールドツアーを開催。作曲・振付をメンバー自身で行う「(G)I-DL」は、2020年に32都市を回るワールドツアーを開催しました。(新型コロナウイルスの影響で全都市の公演をオンラインコンサートに変更)

コラム:ハイブランドも注目するK-POPグループ

K-POPグループは、ファッション界でも活躍。ブランドを世界に向けてアピールするグローバル・アンバサダーに抜擢されたアーティストも多いです。

≪ハイブランドのグローバル・アンバサダーを務めたK-POPアーティスト≫
BTS:ルイ・ヴィトン
リサ(BLACKPINK ):セリーヌ
ジェニー(BLACKPINK)ロゼ(BLACKPINK):イヴ・サン・ローラン、ティファニー
ジス(BLACKPINK):クリスチャン・ディオール
カイ(EXO/SuperM):グッチ

参考:BAZAAR「BTSもBLACKPINKもヒョンビンもアンバサダー! ハイブランドも推すK-POP&韓流スター図鑑」

2.K-POPが世界中で人気を集めている理由5つ

K-POPグループはなぜ、世界中で多くのファンを得られたのでしょうか。ここでは、どのような戦略によって世界中から注目されたのかを探ります。

2-1.多国籍からなるメンバー構成

近年のK-POPグループは、海外の音楽シーン参入を見据えて、韓国人以外の国籍を持つメンバーも含めて結成します。韓国籍以外のメンバーがいれば、その国の反応やファンを獲得しやすいためです。

例えば、中国でコンサートを行う場合、中国人メンバーがいれば中国語でトークができ、ファンにメッセージをスムーズに伝えられます。その上、ファンはメンバーに対して親近感が沸きやすくなります。

2-2.ハイレベルでありながら真似しやすいダンスパフォーマンス

K-POPグループといえば、レベルの高いダンスパフォーマンスを思い浮かべる人も多いでしょう。

ダンスには、「真似して踊ってみたい」と感じさせるような、キャッチーな要素も加えています。覚えやすいダンスなら真似しやすく、ファンが真似して踊り、動画をアップするとK-POPグループの認知が上がるため。

そのため、世界で受け入れられている振付を徹底的に調査し、最先端の振り付けをアーティストのパフォーマンスに取り入れるなど、振付ひとつとっても、戦略が練りこまれています。海外のコレオグラファー(振付師)に振付を依頼することもありますし、才能があれば年齢を問わずに依頼することもあります。


Shinee – Don’t call me
「Shinee」の「Don’t call me」を振り付けたのは10代(2004年生まれ)の人気ダンサー・Bailey Sokさん

楽曲を通じてダンスの難易度は高い一方で、サビの部分は真似して踊れるような簡単でキャッチ―な振付を取り入れているのも戦略の一つ。

実際に、ファンがダンスを真似した動画をSNSで拡散することで、認知度が高まり楽曲が売れることもあります。


BLACKPINK – ‘뚜두뚜두 (DDU-DU DDU-DU)’
ダンス初心者でも踊りやすい。多くのファンがダンスをコピーした動画をYouTubeなどにアップしている

2-3.視聴者の心を掴むMV

K-POPのMV(Music Video)は単に見て楽しいだけでなく、視聴者の好奇心を刺激する作りになっています。例えば、視聴者が「これは何を表しているんだろう」と不思議に思うような展開にしたり、「続きが気になる」と他のMVも観たくなったりするなどの工夫がちりばめられています。

(1)ストーリー性を持たせる
K-POPの多くのMVは、一つ一つのMVにストーリー性を持たせています。さらに単純明解なストーリー展開ではなく、見る人に多くの謎を感じさせる内容に仕上がっています。

例えば「EXO」というグループのMVは、「宇宙から地球に不時着して記憶を失くした12人の伝説」という設定をもとに創られており、そのストーリーを楽しみにしているファンも多くいます。謎の多い展開であるため、考察をする「解析班」としてストーリー考察を自身のサイトで配信しているファンも。


EXO – Power
SF映画を連想させるようなMV

「BTS」のMVもストーリー性のある内容ですが、作品ごとに独立した物語ではなく、複数のMVが組み合わさってひとつの物語を成しています。「I NEED U」という楽曲のMVは、ストーリーが他の楽曲「prologue」、「Run」そして「Young Forever Epilogue」と続いていることが、ファンの間で話題となりました。


BTS – Full Story(I NEED U + Prologue + Run + Young Forever Epilogue) 

ストーリーについては、アーティストや事務所から明確に発表されていません。ファンがMVの1シーンの意味を考えたり、他のMVとの関連性を見出したりしています。あえて明確にすべてを伝えないことで、視聴者の関心を呼び、必然的に話題となるのでしょう。このように、視聴者やファン自らが話題作りをし、拡散、ブームを巻き起こしています。

(2)他の楽曲への関心を抱かせる

MVに他の楽曲のMVの一部を加えて、視聴者の関心を惹くこともあります。視聴者は、チラリと登場した曲も聞いてみたいという心理となるでしょう。

「TWICE」のキュートなダンスが話題となった楽曲「TT」のMVは、ラストシーンで当時、未発売だった「KNOCK KNOCK」のイントロが流れます。逆に「KNOCK KNOCK」のMVのラストには前作「TT」のキャラクターが再登場。

「TT」を見た視聴者は新曲に期待しますし、初めて「KNOCK KNOCK」を見た人は、前作の「TT」を観たくなります。
そのため、一つのMVで二つの楽曲のPRができるというメリットがあります。また、このような「仕組み」があることで話題となり、アーティストの認知度アップにも繋がるでしょう。


Twice – TT


Twice – KNOCK KNOCK

(3)メッセージ性を持たせる
メッセージ性が強いMVもあり、中にはショッキングなシーンがあるため、年齢制限が設けられているものもあります。一見すると年齢制限は見る人を限定してしまいますし、過激なアーティストなのではないかと憶測を呼びます。しかし、メッセージ性のあるMVは人の心を揺さぶるため、人気につながることも。
先述した「BTS」の「I NEED U」のオリジナル版MVには、メンバーが人を殺すシーンやオーバードーズで倒れてしまうシーンがあり、視聴に年齢制限が設けられたことで話題になりました。


BTS -I NEED U
イントロ部分で動画右上に表示される「19」は、19歳以下は視聴禁止を意味する

参考:Kstyle「防弾少年団、新曲「I NEED YOU」MV公開!19禁判定を受け全面再編集」

2-4.Z世代のファン獲得を意識したビジネスモデル

K-POPのファン層の多くは、1990年代から2010年代に生まれた「Z世代(ジェネレーションX)」です。

Z世代は、生まれたときからインターネット環境が整い、SNSで情報を得ることが当たり前。また、自分の考えを発信することに抵抗がなく、SNS上のコミュニケーションもリアルな繋がり同様に重要と考えています。そのため、良いと感じたものはSNS上で発信して他者と共有しようとすることにも積極的です。
K-POPはそのようなZ世代の心を掴むことに重点置いたビジネス戦略で、ヒットを生み出しています。

(1)SNS上でファンと交流

ファンにとって、アーティストは雲の上の存在と言えるでしょう。そこで、SNSを活用してアーティストを身近に感じさせる手法が取り入れられています。

代表的なものが、世界中のファンとアーティスト間でリアルなコミュニケーションが測れるアプリ「Wevers」です。エンターテインメント企業HYBEとインターネット企業NAVERが共同出資している「WEVERSE COMPANY」が運営しています。

Wever上ではアーティストが自宅などから、日常生活の画像をアップしたり、普段の生活のLIVE配信したりします。それに対して、ファンはリアルタイムでコメントを送れ、アーティストから返信をもらえることも。多言語での字幕に対応しているため、世界中のファンが利用しています。

このように、アーティストとファンが交流することで、ファンは親近感が増し、応援したくなるのでしょう。その結果、ファンが増えるという仕組みです。

(2)無料のコンテンツ提供

YouTubeなどで配信されている日本人アーティストのMVは、海外からのアクセスでは見られないものが多い一方で、K-POPは国外でも無料でMVの視聴が可能です。世界的に認知を拡大するのに、効果的な手法と言えるでしょう。実際に、YouTubeにおけるK-POPの楽曲は、一つのMV動画再生回数は数億単位にも上ります。

また、無料コンテンツで充分にアーティストの魅力を発信すれば、視聴者をファン化し、コンサートやグッズ購買へ誘導しやすくなります。

Z世代は他の世代に比べて、料金がかからず、登録などの手間もない手軽に楽しめるものを好む傾向にあります。そのため、K-POPの無料コンテンツ提供という戦略は、Z世代のファン層にマッチした手法と言えるでしょう。

2022年販売予定のBTSとバンダイのコラボ商品

BTSメンバーの容姿や習慣、性格などが反映されたキャラクター「Tiny Tan」。そのTinyTanとバンダイがコラボしたお菓子が販売されています。

2022年も販売予定のお菓子があるので、ファンの方はチェックを。

・2022年3月にTinyTanメンバーを描いたステッカー付グミを販売予定
・同年4月には、小さな起き上がりこぼしのようなフィギュア「クーナッツ」にTinyTanを描いたおまけ(食玩)付ガムを販売予定

世界進出に成功したK-POPの戦略は基礎に徹したマーケティング

こうして改めてK-POPの人気の理由は、彼らのアーティストとしての魅力だけでなく、優れた戦略にあることがわかります。
K-POPの戦略を見てみると、ターゲット層を明確にし、ターゲット層の趣味嗜好や動向に適した手法で認知度を上げ、ファンを獲得するという、マーケティングの基礎的な手法がほとんどだと言えそうです。
もちろん、ファンを獲得するために多くの工夫がなされていますが、それは、国内・海外のビジネスに共通しているのではないでしょうか。自社サービスの海外展開に初めて携わるという方は、肩の力が入りすぎてしまうかもしれません。しかし、ビジネスの場が海外であっても、日本においての営業戦略と同じだと言えるでしょう。K-POPのマーケティング手法を参考に、世界市場でヒットするモノを生み出す戦略を立ててみてはいかがでしょうか。

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