ビジネス基礎知識

2023.12.28

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ジョブ型は新しい働き方!メンバーシップ型との違いもわかりやすく解説

近年、日本経済のグローバル化により国内外企業の競争が激化。
それに伴い、日本国内において「ジョブ型」という雇用形態が注目され始め、導入する企業が増えてきています。

なぜなら、日系企業の多くがとっている「メンバーシップ型」という雇用形態では、
現在の急激な市場の変化への対応が困難になりつつあるからです。
一方で、ジョブ型雇用は生産性を高めやすいと言われています。

そこで、ジョブ型はどのような働き方なのかを解説します。
メンバーシップ型との違いやジョブ型雇用の導入事例も紹介しますので、
求職者だけでなく企業の人事担当の方も参考になるでしょう。

1.ジョブ型雇用はメンバーシップ型雇用とどう違う?

ジョブ型とメンバーシップ型雇用と聞いても、どのような雇用形態なのか明確にイメージできないという方もいるかもしれません。

すべての企業が当てはまるとは言えませんが、それぞれ以下のような特徴があります。

ジョブ型 メンバーシップ型
採用において重視される要素 ・募集する業務を遂行可能なスキルや知識を保有していること ・企業の理念や社内の雰囲気にマッチしていること
・人柄やコミュニケーション能力
業務内容 ・専門性が高い
・限定的
・明確な規定がないケースがみられる
昇進・昇給の基準 ・実績や能力 ・勤続年数の長さ
異動・転勤 ・基本的になし ・有り
人材育成 ・自分自身で能力を高める必要あり ・組織全体で人材育成を実施する(研修制度がある、資格取得サポートがあるなど)

この章ではジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用、それぞれどのような働き方なのかを解説します

1-1.ジョブ型雇用

多くの欧米の企業が導入している形態で、グローバル化社会に対応する雇用形態と言われており、
生産性の向上が期待されています。企業で必要な業務やプロジェクトに対して人材を配置します。

業務内容は契約の範囲内のみ。
そのため、担当する業務に対する専門性やスキルなどを必要とされ、実績や能力が昇給や昇格の基準となります。

契約外の業務に携わらないことも特徴です。
例えば、ある部署において人材が不足してしまった場合、一時的に他部署の社員にサポートしてもらうこともあるでしょう。
ジョブ型では、このような他部署など契約外の仕事を任されることがない上、異動や転勤もありません。

業務委託や派遣社員はジョブ型雇用
「ジョブ型雇用を導入している」と公言していなくても、ジョブ型で人材を確保している企業は少なくありません。
多くの企業が活用している派遣社員や業務委託は以下の理由からジョブ型雇用だと言えるためです。

・与えられた業務を遂行できる知識や能力を有する人が採用される
・契約で取り交わした業務以外を行う義務がない
・転勤や部署移動などがない

中途採用の場合も企業の空いたポストを埋める人材を必要とするため、能力を問われることが多いでしょう。
契約条件などによっては、中途採用もジョブ型に近い雇用形態と言えそうです。

1-2.メンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用とは、日系企業で良く見られる形態です。
まず人材を採用してから仕事を割り当てるため、仕事に対する能力の高さよりも、
企業にマッチした人材であるかを基準に採用される傾向にあります。

業務内容や勤務地を限定されないことが多く、さまざまな業務を担当することもあれば、転勤や異動もあり得るでしょう。
昇給や昇格の基準は能力や実績とする企業もありますが、勤続年数や年齢とするケースも見られます。

2.ジョブ型雇用のメリット・デメリット

この章ではジョブ型雇用のメリットとデメリットを求職者と企業の双方の視点から解説します。

ジョブ型がメンバーシップ型に比べて優れているというわけではありません。
メリットの多いジョブ型ですが、デメリットもあるため、後述する事例(4-3.みんなのマーケット)のように、
人事担当の方は業務内容に合わせてジョブ型・メンバーシップ型と分けるのも手です。

また、メンバーシップ型のように人材を長期間確保することを目的としていません。
そのため、ジョブ型の場合は離職率が高い傾向にあるようです。

2-1.求職者がジョブ型雇用で働く場合

【メリット】
・希望または得意とする分野の仕事に就ける
ジョブ型雇用では、雇用する人材のポジションや業務が決まっています。
よって、自分が希望する、または、得意とする分野の業務にのみ集中して取り組めることが大きなメリット。

定められた業務のみを遂行するので、専門的なスキルを磨けるでしょう。
ある企業で経験を積んだ後、もっと良い条件の企業へ転職するという人も少なくありません。

・契約外の業務を遂行する義務がない
メンバーシップ型雇用の場合は、繁忙期に他部署の業務を手伝ったり、
転勤や異動があったりするため、自分が希望する業務ができなくなる可能性があります。

一方で、転勤や移動がないジョブ型なら自分の業務に集中しやすく、スキルのブラッシュアップが可能です。
また、私生活への影響が少ないでしょう。

【デメリット】
・自主的なスキルアップが必要
メンバーシップ型の場合は社内トレーニング制度が充実しているなど、スキルアップ可能な環境が整えられている企業も多いです。
しかし、ジョブ型では即戦力であることや、業務遂行に必要な能力などを有していることを前提として採用されます。
そのため、自分自身のスキル不足などを感じた場合は、自分で能力不足を解消しなければなりません。

また、前述したように、メンバーシップ型雇用よりも能力や成果を優先して評価されるため、
自主的なブラッシュアップが不可欠です。

・成果を出さないと昇給が難しい
担当している業務で十分なスキルが見られなかったり、
成果を挙げられなかったりした場合は、評価を得られず昇給も難しくなります。

なかには「成果を出さなければ」というプレッシャーから、体調を崩してしまうという人も。

ジョブ型雇用は解雇されやすい?
ジョブ型雇用は成果などが評価基準となるため、
能力不足や業務が遂行できなかった場合は解雇されると考える人は多いかもしれません。

ジョブ型にせよメンバーシップ型にせよ、スキル不足や不履行などは解雇の理由となり得ますが、
上司などから改善策などの提案をし、課題解決の機会を与えることがほとんどです。
それでも改善が見られない場合は、減給や降格といった何らかの処置をとるでしょう。

解雇する場合は、日本ではどのような理由であっても少なくとも30日前には企業から社員に解雇を通知することが定められています。
よって、即日解雇とはなりません。

参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」

2-2.企業がジョブ型雇用を導入する場合

【メリット】
・企業が必要とする人材や即戦力を確保できる
ジョブ型雇用は特定の業務を割り当てるため、その分野に対して熟知しスキルのある人材を採用します。
そのため、即戦力を確保したいときにはジョブ型が適しているでしょう。
必要とする人材を、企業が欲しいときに採用できることもメリットです。

・スペシャリストが育つ可能性がある
業務を通じてその分野の知識やスキル、経験が積み重なり、結果としてより専門性の高い人材へ育つ可能性があります。
ジョブ型の多くの場合は、能力や成果が昇給の基準となるため、
自らブラッシュアップする人もいるでしょう。

・社員のモチベーション向上が期待できる
年功序列が評価の基準軸の場合、成果を上げても評価に直結せず、
社員の仕事への意欲が低下してしまうことは少なくありません。
しかしジョブ型なら仕事の成果や能力が評価に直結するため、社員のモチベーションがアップしやすいでしょう。

・企業の成長が期待できる
即戦力となる優れた人材の確保や業績や売上がアップにつながり、
企業として成長できる可能性が高まります。

【デメリット】
・優秀な人材が流出する可能性がある
雇用した優秀な人材が他社に引き抜かれてしまうリスクがあります。
また、特定の業務を集中して遂行することで、経験も知識も積み上がります。
さらに良い条件の企業へ転職してしまうというケースも。

・人材確保が難しい
ジョブ型で採用するのは誰でも良いわけではなく、定められた業務を遂行できる、
すぐに戦力となるような人材です。
ときには高い技術や能力、知識、経験がなければ採用できないこともあり、人材確保が難しいかもしれません。

特に近年は、少子高齢化が進み働き手が減少傾向にあるため、人材確保そのものが難しいと言われています。

・契約範囲外の業務を任せられない
ジョブ型雇用では、業務内容が明確に定められており、契約範囲外の業務を任せられません。
一時的に人材が不足したときに、ジョブ型雇用で契約した人材を補充するといった
フレキシブルな対応ができないことがほとんどです。

3.ジョブ型雇用の導入増加の背景

ジョブ型を導入する企業がなぜ増えたのでしょうか。
次からは日本の経済社会が抱える課題と、ジョブ型によってどのように解決できるかを解説します。

3-1.メンバーシップ型雇用の限界

少子高齢化が進み、労働の中核となる生産年齢人口が減少しつつある現在は、
企業として成長するためには、従業員1人当たりの生産性を高めることが重要です。

しかし、終身雇用が当たり前のメンバーシップ型雇用では、成果を出さずとも賃金が発生し、
解雇されるリスクが少ないため、従業員のモチベーションが向上しない可能性が大いにあります。

そこで、スキルや成果を重視するジョブ型雇用を取り入れれば、生産性を高められるでしょう。
とはいっても、完全にジョブ型に移行してしまうと、
プレッシャーに弱い社員や経験が少ない若手社員は、働きにくさを感じるかもしれません。
ジョブ型とメンバーシップ型を業務内容などによって使い分けるのもおすすめです。
4章ではジョブ型をうまく導入している事例を紹介しますので、ぜひ目をお通しください。

戦後の復興のために形成されたメンバーシップ型
ほとんどの日系企業がとっているメンバーシップ型は、
戦後に壊滅した経済を立て直して成長するために形成された雇用形態です。
経済の復興には長期的な労働力が必要で、長期間従業員を確保しておく必要がありました。
そのため、評価基準を勤続年数としたり終身雇用を取り入れるなどしていたのです。

3-2.働き方の多様化

テレワークや時短勤務など、さまざまな働き方をする人が増えたこともジョブ型が注目された要因です。

メンバーシップ型雇用は、かつては家庭において男性が仕事で活躍することを前提としていた働き方です。
残業時間が多く、転勤や異動もあるため、女性は働かずに専業主婦として家庭を支えることで成り立っていました。

女性の社会進出が進展している今では、働いている男性も家事や育児を行うケースが増え、
ワークライフバランスが重視されるようになりました。

育児や介護などで時短勤務をするなど、勤務時間に制限がある人材を雇用する場合は、
給与の基準を勤務時間とするメンバーシップ型雇用よりも、
仕事の成果や能力を基準とするジョブ型雇用の方がマッチしているでしょう。

3-3.深刻な人材不足

各業界で人手不足が進みつつある日本。
高齢者人口が増加し労働人口が減少しているためです。
2030年には644万人の人手不足となることが予測されています。
例えば、IT関連の業界では、2030年には約78.7万人の人材が不足するだろうと言われています。

ジョブ型雇用なら就業者が特定の分野の仕事を集中して担当するため、
専門性の高い人材が育ちやすく、専門職人材の不足の解消が期待されています。

また、時短勤務やテレワークを取り入れやすいジョブ型なら、
遠方に住んでいる人材や子育て中の人材も採用でき、人材不足解消が可能となるでしょう。

参考:パーソナル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」
みずほ情報総研株式会社「 IT人材需給に関する調査」

3-4.日本社会のグローバル化

日本では、グローバル進出する企業が増えています。
しかし、イチから人材を育てるメンバーシップ型では刻一刻と変化し、
競争の激しいグローバル市場で勝ち続けることが難しくなりました。
国際社会で成功するにはグローバルな競争力を高めることがカギです。
競争力を高めるには、各分野のエキスパートを育成することが重要。
そこで、素早く成果を出すために即戦力となる優秀な人材を投入するジョブ型なら、
グローバルな市場において勝ち残れるだろうと注目され始めたのです。

ジョブ型雇用を導入することでグローバル進出が成功する可能性が高まりますし、
採用してすぐに戦力となる人材を確保できれば、市場の変化にも対応できるでしょう。

4.ジョブ型雇用の導入例3つ

最後にジョブ型雇用の導入事例を紹介します。
どれも生産性が高まりそうな工夫がなされており、参考になりそうな取り組みばかりです。

4-1.自主性と向上心を育てる【富士通】

富士通は、2020年よりジョブ型雇用を導入しました。
富士通のジョブ型雇用の特徴は、従業員の自主性や向上心を育てやすい環境づくりをしたこと。
評価基準を職責の大きさや重要性に応じて格付けし、段階ごとに月額報酬を決定する「FUJITSU Level」という制度を設けました。
この制度によって、従業員は自ら難易度の高い業務に挑戦しようとするようになったそうです。

また、「社内ポスティング制度」という富士通グループ全社に募集しているポジションを公開し、
すべての従業員が自由に応募できる環境を構築。
自分の意志で異動や昇進ができるので、興味のある分野や得意とする業務に携わることも可能になりました。
従業員が「やりたいことができる」モチベーションを高められる制度です。

参考:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2022/04/21.html

4-2.フレキシブルな働き方ができる【双日プロフェッショナルシェア】

大手総合商社・双日株式会社の子会社である双日プロフェッショナルシェアは、
従業員のやりたいことを支援するために創設されました。

双日グループの35歳以上の社員が支援の対象となり、フレキシブルな働き方が可能となります。
例えば、社内で得たスキルや経験を活かして、双日の子会社や取引先などにおいて興味がある分野の仕事ができます。
また、双日での仕事を本業としつつ、本来やりたい仕事を副業とする事も可能。
さらに、週2〜3日勤務やフルリモート勤務など、自分の生活に合わせた働き方も認められています。

多様な働き方が広まりつつある現代のニーズに適したシステムです。

公式サイト:
https://www.sojitz.com/jinzai/jp/challenge/sps/

4-3.社員全員で評価を行う【みんなのマーケット株式会社】

不用品回収や家の修理・クリーニング、リフォームなどの生活に関するサービスを比較し予約できるサイト
「くらしのマーケット」を運営するみんなのマーケット株式会社。
2020年7月よりメンバーシップ型雇用に加えて、ジョブ型雇用を導入しました。

みんなのマーケットの特徴は、以下のように役割によってメンバーシップ型・ジョブ型に分けたこと。

メンバーシップ型:事業戦略・組織運営など。会社の業務を広い範囲で理解する必要があるため
ジョブ型:仕事の目標達成を重要視するような業務

入社直後は全員がジョブ型で勤務し、
入社3ヵ月後に一定の評価委基準をクリアした場合はメンバーシップ型に変更できます。

ジョブ型は能力や成果を重視しますが、みんなのマーケットでは評価を社員全員が行う点がユニークです。
評価制度は、

・各チームの成果を全社員で評価する「チーム間評価」
・チーム内のメンバー同士で評価し合う「個人間評価」

…の2つがあり、社員全員がお互いの目標の達成具合や成果を把握でき、
成長できる仕組みとなっています。

公式サイト:
https://minma.jp/

まとめ:ジョブ型とメンバーシップ型の理解を深めれば企業も従業員も成長できる

ジョブ型を導入している企業はまだそう多くはありませんが、今後増加することが予想されます。
メンバーシップ型とジョブ型は、特徴が異なるものです。
メンバーシップ型からジョブ型へと切り替えるときにはそれぞれの利点とデメリットを踏まえて、良く検討することが必要です。
企業はジョブ型とメンバーシップ型を業務やポジションによって使い分けるなどすれば、
誰もが働きやすい環境づくりが可能となります。
求職者は、自分がジョブ型とメンバーシップ型、どちらが適しているか把握しておけば、自分に合った働き方ができます。

その結果、企業と従業員の双方の満足度が上がり生産性がアップ、
企業のみならず社員も成長できるでしょう。

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