海外出張の合間にタバコを一服してリフレッシュしたいと思う人は多いでしょう。ところが、日本を含め、世界中でタバコを吸える場所が年々減ってきています。地域によっては、喫煙マナーが日本と違っていたり、喫煙所がなかなか見つからなかったりすることも。

そこで本記事では喫煙習慣のあるビジネスパーソンのための、海外のタバコ事情や自由に喫煙できる場所に関する情報をご紹介します!

1.世界で広がる禁煙化

タバコを吸う人の煙を非喫煙者が吸いこんでしまう「受動喫煙」を避けるため、世界ではさまざまな禁煙化の対策が行われています。

受動喫煙を避ける対策として、屋内禁煙化の動きが世界中で見られています。例えば、2004年アイルランドで、世界で初めて屋内や公共施設を禁煙とする法律を施行。同じく2004年にはニュージーランド、2006年にウルグアイ、2007年にイギリス、2009年に香港、トルコ、アメリカの半数以上の州で同様の法律が施行されています。現在は、屋内全面禁煙の国は55カ国以上にものぼります。

また、消費者をタバコの悪影響から守る対策もなされています。WHO(世界保健機関)において2005年に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発令。世界各国でタバコ税引き上げ、未成年のタバコ購入防止策、タバコの広告、販売促進の禁止または制限するなどして、喫煙者減少を目指しています。

参考:外務省ホームページ「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/who/fctc.html

2.世界の喫煙率は減少傾向

WHOが毎年5月31日を「国際禁煙デー」として定めるなど、世界各国で禁煙をテーマとしたさまざまな活動が行われています。こうした世界的な取り組みにより、世界の喫煙者は年々減少するようになりました。WHOによると、2016年の時点で世界の喫煙率は21.9%ですが、2025年までには17.3%まで減少する見込みと言われています。

世界の平均21.9%に対して、日本の喫煙率は22.5%。平均からやや高めです。
では、各国の喫煙率はどうでしょうか?

喫煙率トップ3は、キリバス共和国(47.4%)、モンテネグロ(46%)、ギリシャ(43.7%)と人口の半数近くが喫煙者。
日本人の海外出張先に多い国の喫煙率は、中国(25.2%)、アメリカ(21.9%)、インド(11.3%)、ドイツ(30.7%)、メキシコ(14.2%)となっています。禁煙化が進んでいるイメージの高いも、欧州・ドイツの喫煙率が高めです。 ただし、欧米では喫煙率が減少傾向にあります。

逆に、中・低所得の国々では喫煙率の低下があまりみられません。これは、タバコの宣伝に力を入れているため。健康被害のリスクについても語られていません。そのため、タバコが体に及ぼす悪影響を知らない人が多いようです。

※参考
「World Health Statistics data visualizations dashboard」
●WHO HP:https://apps.who.int/gho/data/node.sdg.3-a-viz?lang=en
※「Prevalance of tabaco smoking」の「Age standardized prevalence of tobacco smoking among persons 15 years and older」の表、右側にある「Africa」「Americas」などのエリア名をクリックすると、下の「Distribution by country」に各国のデータが表示されます。

「国際禁煙デー(World No Tabaco Day)」
●WHO HP:https://www.who.int/tobacco/wntd/en/

3.各国・各地域の喫煙事情

海外出張先では、どこでタバコが吸えるのか気になるところ。国や地域によっては、禁煙区域や持ち込めるタバコの本数が法律で定められており、違反すると罰金を科せられることもあり得ます。出張前に出張先の喫煙事情を知っておきましょう。

3-1. 【アメリカ】喫煙者は昇進できない? 特に厳しいNY市

アメリカでは「喫煙者は自己管理ができない人」というイメージを持たれており、昇進する上で妨げになると言われています。そのためか、喫煙できる場所が少なく、ニューヨーク市にはほとんどありません。

1990年以降、カリフォルニア州・ニューヨーク州ではオフィスや飲食店など屋内を全面禁煙とする動きが始まり、2017年8月にはニューヨーク市でタバコに関する7つの法令が発令されました。これは、2017年にニューヨーク市内に90万人いた喫煙者を2020年までに16万人減少させることを目的としており、薬局でのタバコ販売禁止、タバコ小売業者のライセンス料引き上げなどを法律で定めました。

さらに、2018年には歩きタバコが禁止、歩行者専用道路や公園でさえ禁煙となり、現在のニューヨーク市では、喫煙できる場所を探すのが困難です。

「NY市 タバコに関する7つの法令」
●The Official Website of the City of New York:
https://www1.nyc.gov/office-of-the-mayor/news/565-17/mayor-de-blasio-signs-sweeping-legislation-curb-smoking-tobacco-usage#/0

≪ニューヨークで喫煙できる場所≫
ほとんどない。屋外であっても建物付近は禁煙の場合もあるので注意が必要です。(「No smoking」の看板がないかチェック)
タバコを吸いたい人は喫煙所のあるホテルを選ぼう。

「ニューヨーク喫煙所ありホテル」 
●ニューヨーク満員御礼ホテル:
http://newyorkhotel.ryogae.com/smoking_corner/new_york

3-2.【ヨーロッパ】禁煙エリア以外はすべて喫煙スポット? 喫煙マナーも…

2004年以降、ヨーロッパ諸国は屋内・公共施設での喫煙を何らかのかたちで禁止してきました。さらに、2007年9月にドイツで「連邦受動喫煙防止法」が発令されるなど、喫煙に対して比較的寛容だったドイツやフランスも屋内・公共施設での禁煙を法律で定めるようになりました。2020年5月には、EU加盟国とイギリスではメンソールなどの風味付きタバコが禁止となっています。

ヨーロッパ各国は世界的に早い段階で屋内・公共施設内の禁煙を法律で定めているため、アメリカ同様に喫煙者にとって厳しい地域というイメージがあるでしょう。

しかし、ヨーロッパは本当に禁煙先進国と言えるのかは微妙なところ。なぜなら、路上喫煙を含み屋外での喫煙が可能なため、歩きタバコやタバコのポイ捨てをする人が多いのです。日本人から見るとマナーが悪いと感じるでしょう。

≪ヨーロッパ諸国で喫煙できる場所≫
駅などの公共施設を除く屋外は、たいていの場合は喫煙可能。ただし、フランスの一部の地域では、公園やビーチが禁煙になりつつあります。
カフェやバー、飲食店は禁煙ですが、テラス席は喫煙可能な場合があります。タバコを吸いたい場合はテラス席がおすすめです。または、店の外に出てタバコを吸いましょう。

≪関連記事≫
「イタリアに出張する愛煙家のための喫煙マナー」 
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「ヨーロッパ海外出張ならフランクフルト空港を使いこなそう!個性的な設備が充実!」(喫煙スポットの記載あり) 
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3-3.【アジア】喫煙者には比較的寛容だが注意が必要 

喫煙に対して寛容な国が多いアジア。しかし、喫煙を法律で厳しく取り締まっている国もあります。「アジア」とひとくくりにせず、各国の喫煙状況を正しく把握しておきましょう。ここでは、出張者の多いタイ、ベトナム、シンガポール、香港、中国を紹介します。

3-3-1.【タイ】喫煙者に寛容と思いきや・・・吸う場所に注意

何に対しても「おおらか」というイメージのあるタイですが、喫煙に対しては厳しいようです。2002年11月より保険省令が施行され、公共の場所での喫煙が禁止となり、徐々に禁煙区が広がっています。現在は公共の場所や屋内、タクシー車内も禁煙。飲食店も全面禁煙です。

タイでブレジャーを楽しむ際は、特に注意が必要です。タイの路上では、ポイ捨ても禁止、日本人からも人気の高い繁華街スクンピットエリアでは、警察が特に厳しく取り締まっています。さらに、2018年2月からタイ国内の24ヶ所のビーチも禁煙となりました。プーケットのパトンビーチ、パタヤのドンターンビーチなど、日本人が観光で訪れるビーチも含まれています。

≪タイで喫煙できる場所≫
飲食店の屋外の席(禁煙の場合あり)または、路上(禁煙エリアの場合もあり)
「No Smoking」の表示がないか、確認してから喫煙を。

≪関連記事≫
「タイの2つの空港を徹底比較! タイ出張で使いこなそう」(喫煙所情報あり)
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3-3-2.【ベトナム】喫煙天国! タバコも罰金も格安

喫煙率が高く、喫煙場所に困らないのがベトナムです。タバコの値段も安く、あらゆる場所で販売されています。タバコによる健康被害への意識が低い低所得者、特に男性に喫煙者が多い傾向にあります。

そんなベトナムでも、公共の場所や屋内のオフィスは禁煙と法律で定められています。この禁煙区域で喫煙した場合は、罰金が課せられますが、約2ドル(約230円)~4.3ドル(約459円)と安いため違反者も多いのだとか。

参考「公共の場における喫煙規則」
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3050498_po_02430211.pdf?contentNo=1

一方、取り締まりが厳しくなっているエリアもあります。例えばハノイでは、2019年5月に「タバコの煙のない観光地」を目指す対策を開始、主要な観光地を禁煙としました。他にも、タバコの健康被害に関する情報を発信する、病院でタバコ依存症のカウンセリングを行うなどの活動も行っています。

2019年7月には、フエ省でタバコのポイ捨てを21ドル~43ドル(約2,240円~4,588円)の罰金が課せられることとなりました。

≪ベトナムでタバコを吸える場所≫
屋外はほぼ喫煙可能(公共施設は禁煙)。屋内であっても、喫煙できる飲食店が多いです。ただし、観光地は禁煙化を進めている場合があるので、注意しましょう。

3-3-3.【シンガポール】高額な罰金も! でも歩きたばこはOK

アジアの中で喫煙に関する法律が最も厳しいのがシンガポールです。公共施設、飲食店など屋内は当然禁煙です。
吸い殻のポイ捨てにも高額の罰金が課せられます。初犯で最高1,000シンガポールドル(約78,644円)、再犯は最高2,000シンガポールドル(約157,288円)と清掃作業のボランティア活動が必要です。

一方、屋外では喫煙可能、意外なことに歩きタバコは禁止されていません。ただし、注意が必要です。ホテルやショッピングセンターなどの建物の入り口から5m以内は禁煙。禁煙エリアでタバコを吸うと1,000シンガポールドル(約78,644円)の罰金が課せられてしまいます。

シンガポールでもう一つ気をつけたいのが、タバコを持ち込む際に税金がかかること。日本からタバコを持って行く場合は税関で申告が必要で、タバコ1本につき税金7%のGST(消費税)がかかります。そのため、免税店で安くタバコを買うなら、入国時ではなく、帰国時の出国後がおすすめです。

タバコの持ち込みを申告しなければよい、と思う方もいるかもしれません。しかし、初犯でタバコ1箱あたり200シンガポールドル(約15,728円)、悪質と判断された場合5,000シンガポールドル(約393,219円)と高額な罰金が課せられます。

日本からタバコを持ち込まなくても、コンビニやスーパーで購入可能です。陳列販売が禁止なので、欲しいタバコの銘柄を店員に伝えましょう。

≪シンガポールで喫煙できる場所≫
禁煙エリア以外の屋外なら喫煙可能で、道に灰皿が設置されている場合があります。飲食店によっては、喫煙スペースを設けられています。ホテルでは、喫煙可能な部屋がありますが、全館禁煙のホテルもあるので予約前に確認を。

3-3-4.【香港】タバコ1箱持ち込めない! ポイ捨てにも厳しい

禁煙化が日本より進んでいると言われているのが香港です。最初は1982年に劇場、公共交通機関での喫煙が禁止され、徐々に禁煙区域が広がりました。現在、屋内はほぼ禁煙です。

一方で、屋外での喫煙はあまり取り締まられていません。香港の街中には、灰皿が設置されているので喫煙場所にはあまり困らないでしょう。

屋外では比較的自由に喫煙できるためか、吸い殻のポイ捨てが問題視されています。ポイ捨て撲滅のためのキャンペーン「Face Of Litter」では、吸い殻に付着したDNAをもとに本人の顔を割り出して写真を作成、大きな指名手配ポスターを街に貼ったことで、日本でも話題になりました。このような運動や罰金を科すなどをしていますが、ポイ捨てはなくならないようです。

香港出張で気をつけるべきはタバコの持ち込み本数です。2019年から、香港へのタバコの持ち込みは19本までとなりました。タバコは1箱20本入りなので、1箱そのまま持ち込めないのです。荷物にタバコが入っていたら、日本の空港で1本吸ってから香港へ向かうようにしましょう!

≪香港で喫煙できる場所≫
公共施設を除く屋外で喫煙可能です。

3-3-5.【中国】タバコがコミュニケーションツール

中国では喫煙でコミュニケーションを図ります。喫煙者が一緒にいるときは相手にタバコを勧める風習があり、これを受け取らないのは失礼にあたるのだとか。勧められたら、いただくようにしましょう。また、海外のタバコは人気なので、自分のタバコを相手に勧めると喜ばれます。

あらゆるところで喫煙する人を目にする中国。歩きタバコ、飲食店内での喫煙も見られます。中国政府は禁煙化対策を開始しましたが、守らない人も多く、なかなか定着しないようです。

中国政府の対策は、主に次の通り。
2017年3月、上海市で「上海市公共場所喫煙規制条例」を施行しました。飲食店、ホテルなど屋内すべてを全面禁煙、喫煙室を撤去し、罰金も科せられることとなりました。一時は規制されたものの、徐々に違反者が増えてきていると言われています。
北京でも禁煙化を進めようとしています。2020年冬季オリンピック招致のイメージアップのために2015年6月「北京市喫煙管理条例」を施行しました。これにより、公共施設、オフィスビル、飲食店など屋内(屋根のある場所)は禁煙となりました。屋外も喫煙可能とした場所以外は禁煙です。しかし上海同様、条例に違反する人が多く、北京市控煙協会に違反者の告発や苦情が多く寄せられています。

≪中国でタバコが吸える場所≫
屋外はほぼ可能、屋内も喫煙可能な飲食店があります。周囲が喫煙していても実は禁煙区域ということもあり得るため、喫煙する場合は念のため確認することをおすすめ。(特に、上海・北京は注意)

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4.出国前にタバコを吸いたいときは? 国内空港の喫煙所情報まとめ

日本でも禁煙化が進み、2020年4月からは東京都内の飲食店は原則禁煙となりました。空港内の飲食店も全面禁煙のところが増えてきています。長いフライト前に一服したい方は、空港の喫煙場所をチェック!

≪日本国内の空港にある喫煙スポット≫
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5.1箱2,000円以上も!? タバコが高い国はどこ?

日本では年々タバコ税が上がり、「タバコが高くて困っている」という声を耳にする方もいるでしょう。ところが、世界的に見ると日本のタバコはそう高くはありません。驚くことに、1,000円以上、2,000円以上という値段でタバコを販売されている国もあるのです。

≪タバコの値段が高い国TOP5≫
1位 オーストラリア 約2,241円
2位 ニュージーランド 約2,139円
3位 アイルランド 約1,606円
4位 イギリス 約1,530円
5位 ノルウェー 約1,444円

※日本は約500円で40位

「Price Rankings by Country of Cigarettes 20 Pack (Marlboro)/世界のタバコ値段(マルボロひと箱)」
●NUMBEO
https://www.numbeo.com/cost-of-living/country_price_rankings?itemId=17&displayCurrency=JPY

タバコが高い国で喫煙していると「タバコをくれ」「1本○○円で売ってくれ」と見知らぬ人から声をかけられる場合があります。気前よくタバコをあげたら、タバコを欲しい人の列ができていたという体験談もあるので、ときには断る勇気も必要です。

まとめ:マナーを守って一服しよう

せっかく海外に来ているのだから、日本ではめったに見かけない噛みタバコや嗅ぎタバコ、手巻きタバコなどを試してみるのもおもしろそうです。逆に、現地の人へ日本のタバコを勧めたら喜ばれ、会話も弾むかもしれません。

タバコは喫煙者にとっては気分転換に欠かせないツール。しかし、周囲の人への配慮も大切です。出張に同行者がいる場合は、喫煙者かどうかの確認をしておく、一緒にいるときに喫煙して良いかを聞くと良いでしょう。もちろん、その国の喫煙ルールの確認もお忘れなく!

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