取材記事

2025.09.25

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働く人の“原動力”に火を灯すコーチング!1冊の本が社員をエンパワーメントする対話型研修「Well Leading」

Wellry,Inc CEO 土田 春香氏

※写真:土田さん(左端)と大和ライフネクストの皆さん
 
「働くことに迷いが生まれたときこそ、立ち止まって考える時間を」
——多忙な日常の中で自分の価値観と向き合い、内面から仕事の熱量を高めていく、新しいタイプの人材育成サービス「Well Leading(ウェルリーディング)」。
今回は、そのサービスを開発したWellry,Inc、CEOの土田春香さんの想いを伺うとともに、共感を寄せる企業の声を交えながら、サービスの核心に迫ります。
 

1.「自分らしく働く人を増やしたい」——サービス誕生の原点


対話と読書で人材育成の可能性を広げる、Well Leading開発者・土田春香さん
 

1-1.IT企業でのキャリアと新規事業へのチャレンジ。「働く人が、もっと自分らしく成長できる機会をつくりたい」

 
こう語るのは、「Well Leading(ウェルリーディング)」の開発者であり、提供元であるWellry,Incを創業した土田春香さんです。
 
新卒入社から13年間、IT企業で法人向けDX支援に携わってきた土田春香さん。
現在は、本業の傍ら、ご自身が創業したベンチャー企業「Wellry,Inc」の代表取締役として「働く人のウェルビーイング」の実現を目指しています。
 
「Well Leading」が生まれたのは、3年前に参加した会社の新規事業プログラムがきっかけでした。
5ヶ月という期間で構想を練り上げたのが「Well Leading」の原型となったそうです。
 
「私は、新しいことを企画するのがもともと好きでした。でも日々に奔走する中で、なかなか自分で“何か”を始めることはできませんでした。そんな中で参加した新規事業プログラムが、一つの転機になりました」と話す土田さん。
 
土田さんが初めて“新しいことを生み出す”という経験をしたのは、実は学生時代のこと。
大学3年生の時、300人規模の留学生が生活する学生寮で「寮母さん」のような立場を任され、そこで年間100回近いイベントを企画・運営したことがあったといいます。

「最初はみんな自室にこもってしまいがちでした。でも、それってもったいない。せっかく同じ場所にいるのだから、もっと交流したいと思ったんです」
 
映画鑑賞会や鍋パーティー、異文化カフェ。
 
イベントを重ねるたびに、寮全体の雰囲気は少しずつ変わっていきました。
このとき得た「“機会”をデザインすることの楽しさ」は、社会人になったあとも土田さんの原動力であり続けました。
 

1-2.本好きだからこそのアイデアと副業起業という選択

 
「働く人をウェルビーイングにしたい」というミッションを掲げている土田さんは、会社員として忙しい日々を送る中で「本を読む」という行為の価値を再認識したといいます。
 
本好きな土田さんにとって読書の本質とは、まさに自分と向き合う時間。
「忙しいビジネスパーソンへ、読書を通して何か気づきを提供することはできないか--」
そうした土田さんの思いが、Well Leadingというサービスのアイデアの根っこにあるそうです。
 
「日々の業務に追われ、自分の気持ちと向き合う余裕すら持てない、私と同じ多くのビジネスパーソンに対して、『立ち止まって考える機会を提供したい』という思いが膨らんでいきました」
 
土田さんは自身のアイデアを具現化するため、2025年にWellry,Incを設立。
本業を続けながら、スタートアップを立ち上げる副業起業という道を選びました。
 
「うちの会社では副業が推奨されていて、働き方もかなり柔軟です。社員に寄り添い、自律キャリアを応援する社の方針は自身の後押しになっています。」
 
現在は早朝や夜、昼休みなどの時間を活用し、本業と副業を両立している土田さんは、「上司の理解があったことも大きな支えでした」と、Wellry,Inc設立当時を振り返ります。
 
そして土田さんは、副業起業のポイントとして、
「本業と副業は『コーチング』という軸でつながっていると感じます。それぞれの仕事に相乗効果が生まれていると感じることも多く活動の原動力になっています」と土田さんは嬉しそうに語ってくださいました。
 

2.Well Leadingとは?——“個人に寄り添う”選書×対話の力

 

2-1.一人ひとりのウェルビーイングを実現する

Well Leadingのミッションは、働く人、一人ひとりのウェルビーイングを実現すること。
土田さんは「そのプログラムは、既存の集合研修とは全く異なります」と話します。
 
「中心にあるのは、その人の課題に寄り添うこと。そして、私が大切にするコンセプトは、『誰もが変わるのではなく、その人が変わる』プログラムです」
 
Well Leadingでは、参加者一人ひとりに対して、「今、何に悩んでいるか」「本当はどうありたいのか」といった内容を丁寧にヒアリングした上で、その人に合った“1冊の本”を選書します。
選ばれた本をもとに、コーチが1on1形式で対話を行い、内省を促していきます。
 
「本の良さは、立ち止まって考えられることだと思っています。映像のように流れていく情報ではなく、自分のペースで読み、咀嚼し、自分の言葉で語れるようになる。そこに本の力があると信じています」と土田さん。
 
そして、Well Leadingの研修で紹介されるのは、単にそのとき話題のビジネス書ということではないようです。
 
土田さんは、選書の際の参加者への思いを、次のように説明してくださいました。
 
「参加者の悩みや状況に応じて、時にはエッセイ、哲学書、サイエンスなども選びます。
課題に向き合う“問い”があってこそ、本はより深く刺さり、その人にとって意味のある1冊へと変わると思います」

 

「Well Leading」のプログラム構成は3つ
「Well Leading」のミッションは、働く人それぞれのウェルビーイングを叶えること。
これによって、個々人のエンゲージメントや仕事への熱量を高め、生産性の向上を目指します。

具体的なプログラムは、大きく3つの要素で構成されています。
1)対話と内省:
コーチとの対話を通じて、参加者自身の内面にある悩みや課題、今後のキャリアへの思いなどを引き出していきます。忙しい日々の中では、自分自身と向き合う「立ち止まる時間」を持つことが難しいため、まずこの対話によって内省を促します。

2)選書:
対話で明らかになった個人の課題や目標に合わせて、最適な本を数冊提示します。これは、単に「この本を読みなさい」という一方的なものではなく、自分自身の力で課題解決のヒントを見つけ、気づきを得るためのツールとして「本」を活用するという考えに基づいています。

3)行動支援:
本を読んで得た学びや気づきを、実際の業務でどのように活かすかという行動に移すところまでを支援します。

 

2-2.第三者だからこそ話せる本音がある

 
Well Leadingのプログラムでは、コーチとの対話も大きな柱となっています。
対話は、自己内省を促し、自分だけでは見えにくい価値観や思考の癖に気づかせてくれます。
 
土田さんは、対話の持つ意味を次のような切り出しで説明します。
 
「職場ではなかなか言えないこと、上司に伝えづらい想いってありますよね。Well Leadingでは、評価や利害から切り離された“第三者”だからこそ、素直に言葉を出せる環境を用意しています」
 
たとえば「本当は別の部署の仕事に興味がある」、「上司との関係がうまくいかず、悩んでいる」といった内容も、対話の場では自然に語られていきます。
それを受け止め、言語化を支援するのが、コーチの役割です。
 
「対話を通じて見えてきたテーマを、改めて“本”、すなわち著者のフィルターを通して照らし返す——この往復運動が、受講者の意識を少しずつ変えていきます。『気づき』で終わらせないのが、Well Leadingのもうひとつの特徴です」
 
「参加者は、読書と対話によってどのような学びを得られるのか?」という質問に対して、土田さんはこう答えました。
 
「最終的に『どのような行動につなげていくか』という行動設計にまで落とし込まれます。
たとえば『職場を活性化するワークショップを企画する』『週に1時間、インプットに専念する時間を作る』『会議で必ず1つ意見を出す』など、参加者自身が設定した目標に向けて、小さな行動を積み重ねていきます」

 
そして土田さんは、Well Leadingのプログラムが提供している意義についても、熱く語ってくださいました。
 
「人が本当に変わるのは、“言葉にして人に伝えた時”だと感じています。だからこそ、受けた学びを他の人に語るワークも取り入れています。この仕組みは、受講者の自己認識を深めるだけでなく、チーム内での相互理解や信頼関係の強化にもつながっているので、参加した皆様には大きな意義を感じていただけていると思います」
 

3.働く人のウェルビーイングを高める——大和ライフネクスト社との対話

 
土田さん(左端)と大和ライフネクストの皆さん(左から服部さん、竹田さん、大塚さん)。
和やかな雰囲気のなかで本音が飛び交いました

 

3-1.Well Leading採用企業との座談会

 
今回、Well Leadingを社員研修に取り入れた大和ライフネクスト株式会社の大塚威(たけし)さん、服部翔太さん、竹田郁哉さんとの座談会が実現しました。
サービスを導入した背景から、実際の効果、社員たちの変化まで——それぞれの立場から語っていただきました。
 

大和ライフネクスト株式会社概要
大和ライフネクスト株式会社は、マンションやビルの管理を中心に、安心・快適な暮らしと働く環境を支える多彩なサービスを展開する総合生活支援サービス企業です。
「LEAD NEXTYLE あしたのあたり前を、あなたに。」という経営ビジョンのもと、住まい・社会・人のつながりを大切にしながら、次代のあたり前を創造し、豊かな暮らしの未来をともにつくっています。

 
BTHacks編集部:大和ライフネクスト・新領域創造部が、Well Leadingを導入されたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
 
--大塚さん(新領域創造部 担当部長)
もともと私たちの部署は、新しい事業を社内から生み出すことをミッションにして立ち上がった組織なんです。
なので、そこで働く社員の“育成”は、通常の業務とは少し違うアプローチが必要だと感じていました。
特に、社員が自らの言葉でビジョンを語れるようになること、自分の考えを自信を持ってアウトプットできること。これが、私たちが一番求めていたスキルでした。
既存事業のメンバーが、事業開発のスキルや知識を習得できるような人材育成を模索している中で出会ったのが、Well Leadingでした。
 
BTHacks編集部:実際にサービスを利用された感想はいかがですか?
 
--服部さん(事業開発部門・入社9年目)
私たちのチームって、兼務している人が多いんです。
みんな本業を抱えながら、新規事業にも関わっているんですね。
時間も体力も限られている中で、自分はなぜこの業務をやっているのかを見失いそうになることがあるんです。
そういうときに、Well Leadingのような“立ち止まって考える研修”は、本当に意味のある時間になりました。
 
--竹田さん(技術部門・入社4年目)
自分はもともと小説とか物語系の本は好きだったんですが、ビジネス書って少し苦手だったんです。
ですが、このプログラムで自分に選んでもらった本を読んでみて、“あ、これはまさに今の自分の課題かも”って、驚いたんですよね。読書がただの知識のインプットではなくて、自分の中で“対話”に変わる瞬間がありました。
 
--服部さん
読書って、インプットとアウトプットを同時に求められる行為なんですよね。
Well Leadingでは、読んだ本の中から“自分にとって響いた言葉”を抽出して、それを他のメンバーに伝えるワークがあって。その過程で、ただ読むだけでは得られなかった“言葉の質”が上がっていくのを感じました。みんな説明がどんどんうまくなっていくんです。
 
--大塚さん
普通の研修って、“正解”を求められる空気があるじゃないですか。
でもWell Leadingは違います。評価や上下関係から切り離された対話だからこそ、みんなが素直に悩みを話せていた気がします。
たとえば、“こんなキャリアを歩んでみたい”という話は、上司には話しづらい。
でもコーチとの対話や、本の力を借りて話すことで、少しずつ自分の想いを言葉にできるようになっていきました。これって実はすごい成長だと思うんですよね。
 
--竹田さん
それ、すごくわかります。自分も最初は“何を言えばいいんだろう”って構えてたんです。
でも、対話を重ねるうちに、“あ、自分ってこう考えていたんだ”って気づく場面が増えてきました。
選書された本の一節に励まされたり、自分でも驚くくらい感情が動いたことを覚えています。
 
--服部さん
この研修の一番の良さは、“知る”ことではなく、“行動が変わる”ことなんですよね。
実際に、プログラム後に“毎週月曜日は必ず目の前の仕事以外に時間を使う”と決めた社員がいたり、僕も自分の意見をきちんと口に出すようになりました。
小さな変化ですけど、確かに行動が変わっていて、それがチーム全体にポジティブな波及効果を生んでいます


ワークショップで白熱としたディスカッションが交わされている
 
--土田さん(Wellry,Inc 代表)
ありがとうございます。お話を聞いて、私も本当に嬉しくなりました。
コーチングと読書を掛け合わせることで、“内省”と“行動”がつながるようにプログラムを設計してきましたが、こうやって実際に現場で成果を感じていただけると、本当に続けてきてよかったなと思います。
 
--大塚さん
実はこのプログラム、かなりカスタマイズしていただいてるんですよね。
フェーズによって焦点を変えて、“マインド重視”の時期もあれば、“リーダーシップやスキル定着”に寄せていただいたこともあるので。まるで一緒に“育ててきた”という感覚にすらなれるプログラムなんです。
 
--土田さん
本当にそうですね。大和ライフネクストさんとは、事業スタートの頃からずっと“育て合う関係”でいさせてもらってきました。こういうパートナーシップは、私たちにとっても大きな財産です。
 

4.「言葉を持った人」が組織を変える——Well Leadingのこれから


出版社さんのイベントスペースでチームビルディングとしてコーチとワークショップを開催した際の様子
 

4-1.学びを「一人で終わらせない」ために

変化の激しい時代の中で、企業が持続的に成長していくために、いま何が求められているのでしょうか。
それは、単にスキルやノウハウを身につけた人材ではなく、「自らの価値観や言葉を持ち、それをもとに周囲に働きかけることができる人材」だと土田さんと大和ライフネクストの皆さんはおっしゃっていました。
 
Well Leadingが目指すのは、まさにそのような“内発的なリーダーシップ”を育てること。
対話×選書×行動支援という三位一体のアプローチを通じて、自分らしく考え、語り、動く人を増やしていくことにあります。
 
Well Leadingの特徴は、個人の学びに終始せず、それを組織に還元していく設計にあります。
たとえば、参加者が学んだ内容を“言葉にして誰かに伝える”アウトプットの機会を組み込むことで、学びがチーム全体へと波及していきます。
 
また、プログラムの最後には「アクション宣言」として、学んだことをもとに何を行動に移すかを明文化。
「これにより、内省だけに留まらず、組織のカルチャーに対しても具体的な変化を促すことができる」と土田さんは説明してくださいました。
 

4-2.一人から、チーム、そして企業全体へ

「一人の変化が、やがてチームを変え、組織を変えていく」——これは土田さんが繰り返し口にしていた言葉です。
 
実際に、大和ライフネクスト株式会社でWell Leadingを受講したメンバーからは、
「自己開示が活発になった」
「メンバー間の対話が深まった」
「上司と部下の関係性がフラットになった」

など、組織風土に関わる変化が報告されています。
 
これまで「対話が苦手」とされていた若手メンバーが、自分の考えを言葉にして発信するようになったという事例もありました。
こうした変化の積み重ねが、「自走する組織」へとつながっていきます。
 

5.企業の成長には個々に合わせた学びが不可欠


 
「働く人の数だけ、課題の種類も価値観も異なります。だからこそ、一律の研修ではなく、その人に合わせた“学びのメニュー”が必要なんです。Well Leadingは、そうした“多様な育成”を可能にする仕組みだと自負しています」と土田さん。
 
これからの時代における仕事との向き合い方については、次のようにお話してくださいました。
 
「私たちはこれまで、成果を出すことや成長することを軸に、働く意味を語ってきました。でも、これからの時代はもっと多様で、柔らかく、自分らしい働き方や目的があっていいはずです」
 
土田さんがご提案するWell Leadingは、そうした時代の価値観に寄り添いながら、一人ひとりが「自分の働き方と言葉」を持つことを後押しする人材育成サービスと言えるでしょう。
 
積み重ねが、やがて企業という組織の“器”を広げていく——
 
そんな未来を思い描きながら、Wellry,Inc土田さんの挑戦は、これからも続いていきます。
 

Wellry,Inc. 代表 / 創業者 土田春香さん プロフィール
IT企業で12年間にわたりDX支援や新規事業開発に携わった後、2025年2月にWellry,Inc.を設立。
対話と選書による新しい人材育成プログラム「Well Leading(ウェルリーディング)」を立ち上げる。
サービスを法人・個人向けに提供。
月に約50冊を読む読書家でもあり、読書会や対話選書イベントを日本全国で行うなど、多方面で活動中。

Wellry, Inc.:https://wellry.jp/

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