ウェビナーレポート

2020.07.17

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海外出張の“あり方”を考える 〜Afterコロナ、Withコロナ〜【Nextビジネストラベル/海外出張リーダー討論会 Vol.1】

「Nextビジネストラベル」について
「Nextビジネストラベル」は、さまざまな業界や業種の方との交流を通じて、現在の出張の価値観に捉われることなく新しい出張のあり方に気づき、発見をしていきたいという願いを込めた企画です。『BTHacks』では、「Nextビジネストラベル」における気づきや発見を発信していくことが使命であると考えています。

2020年に入り新型コロナウイルス感染症が世界規模で流行。緊急事態宣言以降の日本は、海外への渡航や人と直接会う機会は急激に減り、以前のように海外出張へ行ける日常も戻ってきていません。「新しい生活様式」が叫ばれる中、海外出張の“あり方”も見直さなくてはならない状況にあると言えるでしょう。

今回は過去に取材した海外出張リーダー5人に集まってもらい、「Afterコロナ、Withコロナ~出張に関する考えの変化」のテーマで討論会を開催。コロナ禍の先にある海外出張のあり方の変化や海外ビジネスの未来ついて話してもらいました。

参加者プロフィール

○株式会社01Booster 共同代表取締役 合田ジョージ氏
東芝にて国際アライアンスや海外製造によるデザイン家電の商品企画を経験、村田製作所では海外戦略部の部長に就任。現在は、株式会社01Boosterにて大企業とベンチャーの連携、社内起業、ベンチャー起業の支援や出資、イノベーション教育や研究開発の事業支援などに取り組んでいる。
合田 海外ともやり取りしているので、何かお役に立てるお話ができたら良いと思っています。
○株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長兼CEO 森若幸次郎氏
株式会社シリコンバレーベンチャーズ、株式会社モリワカの経営をしながら国内外の企業のアドバイザーも務める。シリコンバレーベンチャーズでは、海外のスタートアップ企業を日本に紹介、オープンイノベーション支援を行う。デジタルトランスフォーメーション支援、ビジネスをインドや新興国で行うサポート、C2Cなどのアプリ開発にも携わる。モリワカでは医療機器や福祉機器の販売や開発を実施。他にも、Startup GRIND TOKYOにおけるイベント開催、起業率100%を目指す情報経営イノベーション専門職大学における客員教授を務める。毎月「Forbes Japan」「りそな銀行」「日刊工業新聞」などでコラムを連載中。
森若 約17年間、海外と日本を行き来しています。読者の皆さまにとって有益なコンテンツとなるよう、仲良く楽しく議論を行わせていただけたら幸いです。
○日系商社勤務・鷹鳥屋明氏
Instagram・Twitterのフォロワー合計数10万人。フォロワーの9割が中東のアラブ人であることから、中東で「一番有名な日本人」と呼ばれている。SNSを活用して日本政府の経産省・国交省などの中東向けプロモーションや、中東向けに日本の物産を紹介、中東のイベントの手配やアテンドなどを行う。中近東のビジネス情報に関する連載も持ち、執筆活動にも取り組んでいる。
鷹鳥屋 2月まで中東にいたので、向こうの情報を含めていろいろなことをお話しできればと思います。
○リベルタ株式会社代表取締役・澤野啓次郎氏
リベルタ株式会社ではデジタルコンテンツ制作事業と並行し、「ハートランド・ジャパン」というブランドで、インバウンド専門の旅行業を営む。日本ではまだ知られていない「アドベンチャートラベル」の要素を取り入れた地域特化型の旅行商品を造成・販売・催行することで地域活性を図っている。同事業においては海外の取引先が多く、海外出張の頻度も高い。同社には外国籍の社員が多数おり、異文化に触れる機会も豊富。
澤野 海外に対して知られざる日本をプレゼンすることが使命だと思っています。残念ながらコロナ禍の影響で、インバウンドビジネスは大きな打撃を受けてしまいました。向こう1~2年は厳しいと言われています。今後のために皆さんの意見をお聞かせいただけたら幸いです。
○株式会社エイプリルナイツ 代表取締役CEO 三瀬尚徳氏
某ゲームタイトルで日本一のチームを運営し、選手としても参加していた経験を持つ。エイプリルナイツではゲーマー社長として、「ゲーム」を共通言語に組織の文化形成や教育・採用のビジネスを行う。また、ゲーマーをエンジニアとしてキャリアアップするための教育事業や、IT領域での開発支援サービスにも取り組んでいる。2019年には、社会人ゲーマー向けの新規社内コミュニケーションWEBサービス「cogme(コグミー)」の運営を開始。
三瀬 皆さまに比べて海外に日頃から行くような仕事ではないので、少々場違い感がありますが……。海外発信の文化である「eスポーツ」を扱っている会社ですので、その辺りを含めてお話ができたらと思います。

1.新型コロナの影響でコミュニケーションのメインは「対面」から「オンライン」に

——森若さんは以前、世界中を飛び回られていると仰っていました。現在、コロナ禍による影響は出ていますか。

森若 昨年は10カ国以上、 シリコンバレーやニューヨークをはじめイスラエル、インド、フランス、ルクセンブルクなど毎月のように海外へ行っていましたが、全てなくなりました。

以前の出張の主な理由は、現地でしか行えない重要人物とのミーティングやイノベーションイベントへの参加などでした。今は、コロナ禍の影響で世界的にオンライン化が進んだので、現地に赴かなくてもよくなりました。1日に3〜5カ国とオンラインミーティングを行っています。時間的・金銭的なコスト削減にも繋がり、より効率良く多くの仕事がこなせるようになってきました。

——鷹鳥屋さんも海外に滞在する時間が長い印象ですが、状況はいかがですか。

鷹鳥屋 多い時には月に2回、中東を行き来していましたが、今は現地に行かなくなりました。これだけ日本にいるのは久しぶりです。よく海外で仕事をされている多くの方は同じ状況かと思います。

中近東は、これまでのように事故や金融的ショックで経済が動かないのではなく、外出禁止令など人の移動等を制限されたことから、政府そのものが機能しなくなっている状況です。行政だけでなく流通等も動かなくなっているので、なかなか手の打ちようがないと。

——海外出張へ行けなくなったことで気づいたことは?

合田 世界中の企業が参加する会議が年1~2回あるのですが、今は直接集まることができないのでオンライン上で行われています。そこで何が起きたかというと、コミュニケーションが密になりました。

初めて会う人と信頼関係を築くには直接会う「Face To Face」がいいと思いますが、ある程度の関係ができているのであれば、直接会って長い時間使うところを、オンライン上で3回、短時間で話すだけで十分なコミュニケーションが図れると気付きました。前よりもコミュニケーションが密になったと感じています。

——他の皆さんも、オンライン会議やテレワークでコミュニケーションに変化は感じますか?

澤野 海外出張関連でいうと、年に数回、大規模なトラベルエキスポが行われていましたが、大半が中止になりました。これまで入っていた2020年4月以降の予約は全てキャンセルに。また、海外での商談会やエキスポなど、販路を開拓するための「Face To Face」でのミーティングも全くできなくなってしまいました。観光業界全体が、次のステップをどうしようかと悩んでいる状態です。

勤務面でいうと、「出勤」という定義が壊れ、仕事はオンラインで行っても支障はないことに気づき、「分散型オフィス」を考えるようになりました。我々のような小さな会社にとっては、競合の多い東京でいい人材を探すよりも、競合の少ない地方で探す方が、メリットが大きいんです。

地方でのツアー造成については、地方に在住する優秀な人のネットワークを活用した方がいい成果を出せることもあります。出勤をしなくても、WEBツールを使えば日々のコミュニケーション、ビジョンの共有、進捗確認ができますので、何の問題もありません。「なぜ自分はこれまで出勤ということにこだわっていたんだろう?」と、リモートワークの快適さや効能に気づきましたし、自分自身がオフィスに行く機会も飛躍的に減るという変化がありました。

——三瀬さん、御社でも何か変化はありましたか。

三瀬 弊社では約100人の社員がテレワークに移行しています。一部のグループでは、業務時間中はカメラを繋いで8時間、皆が同じ仕事をするという取り組みを行いました。結果、2つの効果がありました。

一つは生産性の上がったグループがいたこと。そのグループは「ほうれんそう」ではなく、雑談と相談、「ざっそう」が増えたグループです。「ざっそう」の中に「ほうれんそう」が含まれているので、メンバーに対する安心感がある中で自然とコミュニケーションが密になり、生産性が上がったと考えています。
もう一つは、お互いに顔を合わせない方がスムーズに仕事が進むグループ。話の長い人が多いグループは業務から脱線しがちなので、常に顔を合わせていると生産性が下がってしまうこともありました。

2.アフターコロナのビジネスは「オンライン」と「直に会うこと」の両立がカギ

——コミュニケーションについて、これまでよりも「密」になったとの意見がありました。その他、プラスに転じたと感じることはありましたか?

鷹鳥屋 大きな変化としては、オンラインツールが普及したことで、これまでは一方通行でメッセージを出していた上司や偉い人に対して、双方向で意見提言できるようになりつつあります。おもしろい変化だと感じています。

中東では、上司や偉い人に提言する際はSNSで発信して、関係者が発信内容に気づいたら対策を取るなどの動きがあります。今はトップ自らオンラインツールをオープンにして、「言いたいことがあればコンタクトを取ってください」と、部下からの意見をトップまで一気に上げる動きも出てきました。困ったことがあっても、スムーズに改善へ進むようになったとの声もありました。

森若 オンラインツールに移行したことで、一度に会議やイベントに参加できる人数が増えたのも利点だと思います。これまでの「face to face」の会議では各々の担当者がひとりで参加するケースが多かったのですが、今は関係者全員が参加することも可能になりました。

先日も、ハーバードのアルムナイ限定で約2500人規模のイベントがありました。参加者全員にアンケートを行い、意見や傾向を集計しながらイベントを進行したんです。世界の経営者たちが「今、何を考えているのか」を知ることができ、おもしろいと感じましたね。
また、シリコンバレーベンチャーズがコミュニティパートナーを務める「WomenTech Network」主催のイベントでは、世界中の約10万人の女性エンジニアを対象にしたイベントを開催します。オンラインでは、大人数が一斉に参加できるので、情報をオープンにしやすくなった印象です。アドバイスやアフターフォローもやりやすくなりました。

——合田さん、オンラインのやり取りでコミュニケーションが密になると、今後の出張のあり方にはどのような変化があると思われますか?

合田 「withコロナ」の状態では、出張ができるかどうかは、すべてコロナの収束やワクチンにかかってくると思います。では、「アフターコロナ」の時代では何が起きるか。「オンラインのパワー」を目の当たりにした影響は大きいと感じています。

今までは「Face To Face」で会って話し、足りない部分をオンラインで補足するやり方でした。「アフターコロナ」の時代は、コミュニケーションを図るためにオンラインを活用し、「三密」は信頼を構築するために使うことになるのではないでしょうか。「オンライン」と「三密」両方を活かす方向になると考えています。

出張そのものの回数は減ると思いますが、完全に無くなりはしません。その代わり、オンラインでのコミュニケーションがメインになり、出張で足りない部分をフォローする形になるでしょう。

3.これからの出張は五感で信頼関係を構築する希代の出張へ

——今後、出張の在り方がどのように変わってくるかについてお聞きします。

合田 今までは海外出張をしてから後日オンラインで会議、という流れが主流でした。でも今後は、まずはオンラインで会ってやり取りをしてから、海外へ出かけて直接会う。まさに、海外出張は最終段階、つまりクライマックスとして位置づけられるのではないでしょうか。

すべてリモートになってしまえば家族や恋人、友人とも直接会う必要がなくなるかもしれませんが、実際にそのようなことはあり得ません。必要な時には、大切な人と直に会う機会を作るでしょう。人と直接出会える海外出張は「聖なる出張」、素晴らしい価値のあるものになると考えます。

森若 相手と「五感を共有すること」は、海外出張の醍醐味ですよね。情報共有はオンラインでも行えますが、五感の共有となるとまだ難しい部分があると思います。私自身も多くの国を訪れましたが、仕事相手や友人が自宅でもてなしてくれた経験は、料理の味や握手の感触まで、非常に印象に残っていますし、以前より絆が深まったと感じました。直接会う時間を作ることに、ますます価値が生まれると思います。

——海外出張が、合田さんのが仰るクライマックスになるとすると、1回ごとの出張に求められる質も変わってくるということでしょうか?

森若 経済的なリターンや費用対効果を出すためにも、下準備をしっかりとする必要があるでしょう。オンラインであれば多くの国の人とすぐに仕事ができるにもかかわらず、わざわざ海外出張をするわけです。行く時間も手間もお金も何倍ものリターンが返ってくる出張でないと、行く意味を成さないと思います。そういう意味では、慎重にならざるを得ない気がします。
合田 今のご意見、もっともだと思いますが、あえて別な考えも言うと、信頼の獲得についてはオンラインだけでは難しいのではないでしょうか。
仕事の成果を出すことは、オンラインで効率的にいくらでもできるわけです。しかし、人間的関係の構築は、経済的なリターンや費用対効果では成立しないことがあると思うのです。
鷹鳥屋 ビジネスは人間関係の延長にありますから、海外出張は人間性をジャッジメントすることに使われるのではないでしょうか。何千キロも離れている人と、オンラインで話していても「この人はどんな人だろう」と迷いが生じることもあるでしょう。でも、現地へ行き、相手と一緒にお茶を飲んだり、時には一緒に鷹狩りをしたりすれば、最終的にどのような人なのかを見定めることができる。

海外出張は、「この人は一回きりだな」「この人は長期間でずっと付き合いそうだな」と自信をもってジャッジメントする機会として使われるのではないでしょうか。

——三瀬さんは、これから求められる出張の質についてどう思われますか?

三瀬 弊社はイベントを運営する機会も多く、現地の温度感や空気感をしっかりと共有しておかないとおかしな方向に進んでしまうこともあります。海外出張で取引先と合流して、ともに時間を過ごすことは、今まで以上に重要になってくるでしょう。

コロナ禍で多くの仕組みが自動化されることで、自由になる時間も増えるはずです。空いた時間を使って、ビジネスとは関係のないところの出会いや時間を一緒に過ごすことも大事だと考えます。

——ビジネスと関係のない部分の時間が、お互いの価値を高めるという考えはすてきだと思います。澤野さんは何かありますか。

澤野 ビジネスとは、取引先と信頼関係を作ること。つまり人間関係を作ることでもあります。海外出張をしたときも商談を抜きにして飲みに行くなど、現地の人たちとのコミュニケーションを工夫することで、人間関係の構築に良い影響を得られたという話も聞きます。そのあたりは日本の商習慣と共通の部分があります。今後の海外出張では、やみくもな効率性よりも、より密な関係を作るためにもそういった「余白」みたいな部分を求めることになるだろうと思います。

4.海外出張リーダーが考える「Nextビジネストラベル」

——オンライン会議やモニター越しでは得られない、五感を使った信頼の構築。ここに海外出張の価値があると発見できたのは大きな収穫でした。最後に、今後のNextビジネストラベルに求めるものについてご意見をお聞かせください。

鷹鳥屋 今回の討論会でいろいろ業種や業態は違えども、考えは近いものがあると感じました。「聖なる出張」という言葉が響きまして、今後、出張がもっと素晴らしい価値のあるものになったときに、実際に対面して会う際には何ができるのか、その価値を再度考え直すのもおもしろいと思います。
三瀬 イベントはとりあえずオンライン化の流れがありますが、オンラインで開催できない隔絶された地域との格差を無くしていく動きが必要です。国や自治体、地域コミュニティとの連携には、五感を使った対面での信頼の構築が求められると思います。
澤野 今後の海外出張は、より無駄なことを求めるようになるかもしれませんね。出張の取捨選択が起きて、現地に赴いた際は、人間関係の構築や五感でこそ感じられる部分を求めるようになって、それがビジネス的にも成果に繋がるのだろうと思います。
合田 全てがそうだとは言い切れませんが、海外出張は限りある時間で相手と密なコミュニケーションを取る形になっていくと思います。非常に素晴らしいものになるのではないでしょうか。
森若 オンラインで心の距離を縮めて、オフラインで信頼関係を構築という具合に、今後の海外出張は「オンライン&オフライン・トラベルサービス」みたいになるのだと思います。本当に今日は貴重なお時間、ご縁を愛りがとうございました。

今回討論会に参加していただいたみなさんのインタビュー記事はこちら!

合田ジョージ氏
どの国でも応用可能!怖がり起業家が「不安」を逆手に取った出張成功術【海外出張リーダー】Vol.10

森若幸次郎氏
世界をまたぎイノベーションを創出! 起業家育成を志す経営者の仕事術【海外出張リーダー】Vol.9

鷹鳥屋明氏
海外出張で命をかける!? 現地に溶け込むサラリーマンの中東ビジネス手法【海外出張リーダー】Vol.4

三瀬尚徳氏
出張経験は「仕事のエッセンス」 ゲーム好き社長の巧みな海外出張術に迫る【海外出張リーダー】Vol.3

澤野啓次郎氏
海外出張は”世界人”になる時間 【海外出張リーダー】Vol.1

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